提言−消費税に係る二重課税問題の解消


「直接消費税を消費者に支払わせるのは当然」というのが社会通念になっていますが、「事業者が課税資産や役務に係る価格を決める(或いは請求する)時点で一義的に消費税が譲渡価格に転嫁されるので、決済時に消費税を支払わせるのは消費者に二重負担を強いています。」

例えば、ネジを製造する事業者は、資材、副資材、製造機械を動かす電力などを税込価格で仕入れて製品にし、税込諸経費、利益及び自らが納付すべき消費税額を加えて譲渡価格を決めます。この事例でも譲渡価格に消費税を上乗せして販売する必要はないのです。

そこで、消費税転嫁対策特別措置法第10条を削除して消費税第63条を順守させることにより消費税の二重課税問題の解消及び消費税率10%への移行に国民的合意を得るよう措置することを政府に提言します。

なお、この提言の結果に拘わらず国民の力でECS(電子商取引システム)の構築を進め、実質的に消費税の二重課税問題を解消することを申し添えます。



特定非営利活動法人 自己宣言セルフデクル
理事長 清水 博
滋賀県守山市今市町139−4

釈迦に説法ですが、この提言の必然性は次の通りです。

定義:法律で「価格の表示」についての定義がないのでここで便宜上定義します。

1.取引に際し消費者から外税消費税を徴しない消費税法第63条に規定する間接消費税を含めた正規の「価格の表示」を「63総額表示」と呼びます。

2.取引に際し消費者から外税消費税を徴するのを暗に認めるものの平成30年9月30日限りで効力を失うとされている時限立法の消費税転嫁対策特別措置法第10条の柱書に登場した税込価格の表示を「10総額表示」と呼びます。


消費税は、課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算されます。

消費税額=(課税売上高÷(1+税率)×税率)−(課税仕入高÷(1+税率)×税率)

この図で、小売業者の売上げ100,000円が63総額表示であり、 消費者支払総額108,000円が10総額表示に該当します。

63総額表示は間接税込本体価格表示であり、10総額表示は間接税込本体価格表示に税率を乗じるので二重課税になります。

あるメガネ店は、それぞれ税込定価のフレームとレンズで組立てたメガネ完成品を63総額表示で販売しています。完成品の価格を決める時点で事業者が納付する間接消費税が63総額表示に含まれるので、直接消費税を請求しなくても済むのです。

 例  フレーム  レンズ  加工賃 ケース等 税込本体価格
価 格 税込14,260 税込5,300 税込2,000 −−− 21,560
表 示 値札 価格表 なし なし 63総額表示

〇〇〇〇円(内税)という63総額表示にしましょう。

もう一つ、消費税率変更に伴い価格に改めるには、含まれている消費税を控除した税抜本体価格に税率を乗じて計算しますが、10総額表示÷(1+税率)=63総額表示、税抜本体価格=63総額表示÷(1+税率)の関係にあり、63総額表示の100,000円も10総額表示108,000円の税抜本体価格は92,592円なので、税率10%になっても92,592円×1.1=101,851円(内税)です。

63総額表示 製造業者 卸売業者 小売業者
備  考
8%時の譲渡価額 50,000円 70,000円 100,000円本体価格は不変
本体価格 46,296円 64,814円  92,592円譲渡価額÷1.08
8%時消費者負担額  3,704円  5,185円  7,407円本体価格×0.08
10%時の譲渡価額 50,926円 71,296円 101,851円本体価格×1.1
同上消費税  5,092円  7,129円  10,185円売上に係る消費税−仕入に係る消費税
10%時納付税額  5,092円  2,037円  3,056本体価格×0.1

この提言の実施について何ら予算措置が必要でない上に、行政及び事業者の消費税に係る事務作業を大幅に簡素化することができます。